職場でのコミュニケーションにビジネスチャットツールを使う場面が増えています。口頭で話すよりも、情報の伝達、記録、整理がしやすいチャットツールは、同僚や上司とのコミュニケーションを円滑にします。
その一方で、チャットはテキスト(文字)をベースにして会話を進めるため、対面でのコミュニケーションとは違ったコミュニケーションテクニックが求められます。こうしたテキストでのコミュニケーションに苦手意識を持っている人も多いでしょう。
そこで本記事では、テキストコミュニケーションの苦手を克服するための5つのコツをお届けします。
目次
テキストコミュニケーションのメリットとデメリット
テキストコミュニケーションは、会話の舞台をオフラインからオンラインに置くのが特長です。メールやチャットツールなどを使って、いつでもどこからでもコミュニケーションができる点がメリットです。
また、テキストで伝達した情報はすべて明文化されるため、口頭でのコミュニケーションで起こりがちな「言った・言わない」という問題も発生しません。
その一方で、相手の表情や声音の変化をダイレクトに感じられないテキストコミュニケーションは、自分が意図しないところで、誤解を生んでしまったり、相手に間違った印象を与えたりしかねません。
テキストコミュニケーションの利点を最大限活用して、こうした誤解を産まないために、多くのひとが実践してきた、対人関係のコツをチームコミュニケーションに取り入れましょう。
デール・カーネギーの古典的な名著『人を動かす』は、メディアが何であれ、ひとに良い印象を与えるにはどうしたら良いのか教えてくれます。この名著からテキストコミュニケーションの苦手を克服するための5つのポイントをお届けします。
■ 心から感謝を示す
「感謝の気持ちを表す」のは単純なことのようですが、ペンシルベニア大学ウォートン校の調査によれば、感謝によって従業員の成績が50%も向上しました。感謝は単に人を良い気分にするだけでなく、仕事のパフォーマンスを向上させることがわかったのです。
感謝の気持ちを相手に伝える時は常に「誠実さ」を意識しましょう。以下のような不誠実さは避けましょう。
- 見え透いたお世辞は避ける
- 社内政治のかけ引きのために感謝を伝えない
- 効果をねらって大げさに感謝を伝えない
チームメンバーの仕事について心から感謝を伝えたいときは、具体的に何について感謝しているのかを伝えましょう。また、大きな成功だけでなく、小さなことにも感謝することを忘れないでください。
テキストコミュニケーションでの感謝の伝え方
テキストコミュニケーションの場合は、感謝の機会を見つけたらチームチャットの適切なトピックや、時にはプライベートメッセージも使って、感謝の気持ちやメンバーの良い仕事を褒めましょう。
チームメンバーの努力を認めて言葉で表現すると、そのときの感謝の気持ちがしっかりと形になります。次にお互いにメッセージを交わすときには、ポジティブな気持ちで対応できるでしょう。綿密な調査から営業の成果まで、一人ひとりの役割において賞賛すべき価値がきっと見つかります。
どこから始めたら良いかわからない、そんなときはチームに「影の英雄」がいないか探してみましょう。単調なタスクに取り組んでいるときこそ、人に感謝されると励みになり、自分の役割に対してやる気が湧くものです。
カーネギーはまた、課題が改善できたときに「褒める」ことを推奨しています。
スキルアップした後輩へチャットのトピックで賞賛を送りましょう。チームメンバーが困難な局面を切り抜けたときにも、やはり賞賛しましょう。人から優しい言葉をかけてもらうと、誰でも不思議と自信が湧き力を発揮できます。
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■ 他の人の興味関心にあわせる
他の人の興味関心に会話をあわせる、というのは、次の3つのキーエリアにおいて適応できます。
- チームメンバーの参加を促すとき
- 仕事について話し合うとき
- 雑談用スレッドを使うとき
チームメンバーの参加を促す
忙しい就業時間内にチャットに返信をもらうのは難しいものです。すぐに返事がほしいときのコツとしては、相手のニーズや欲求をくすぐることです。以下のようなことを意識してみましょう。
- 仕事のリクエストをするときに相手の役割や目標にあわせて話をもっていく
- 単に作業を依頼するのではなく、相手の部署やチーム、企業全体にどう利益があるのか説明する
たとえば、新しいキャンペーン情報をシェアしてもらいたいのなら、社内のメンバーがシェアすることでどのように売り上げが伸びるのか、データで示すのも良いでしょう。
個人への依頼であれば、チームの目標など全体の目的にとっての有用性がわかるようにします。部署やチーム、個人の間でのシナジー効果をできる限り促進しましょう。
仕事について話し合う
仕事のメッセージに確実に返信してもらうためには、一人ひとりの役割がプロジェクトに欠かせないことが伝わる書き方を心がけると効果的です。
意思決定プロセスのさまざまな段階でチームメンバーを巻き込みましょう。メンバー各人がプロジェクトに対して個人的な思い入れや責任感をもつようになると、メッセージもしっかり返ってくるようになります。
雑談用スレッドを使う
雑談用スレッドでは絵文字やGIFなどを活用して、チームメンバーにあなたの個性を見せましょう。
最近の話題やできごとについて共通の興味を見つけ、それについて感じたことやニュースを互いにシェアします。
政治など人によって考え方が異なる話題は、相手に失礼がないと確信がある場合をのぞいて避けたほうがよいでしょう。自分の意見や関心をもつのは素晴らしいことですが、ひとに考えを押し付けたり、相手が興味のないことに興味を向けさせようとするのは賢明とはいえません。
3つのキーエリアのどの場合においても、メッセージやコメントは適度な頻度で賢く送信することが大切です。仕事の生産性に影響しないようにタイミングを選び、相手に対して適切なトピックかどうか送信ボタンを押すまえにもう一度確認しましょう。
■ 議論に勝つには議論を避ける
チャットツールでは、対面のコミュニケーションのように身振りや表情などが見えないために誤解が生じやすくなります。メッセージを送信したときに意図したことが、相手によってまったく違う意味に受け取られてしまうことも起こります。
健全な議論であればアイデアを生みますが、身もふたもない議論はできる限り避けましょう。カーネギーが説く「非難も糾弾もせず、不平も言わない」という姿勢に学び、チームの円満を維持しましょう。
残念なことに、それでも対人関係の衝突は起こり得ます。衝突が避けられない状況に向かっていると感じたときは、次の2つのカーネギーのアドバイスを参考にしてください。
- ひとの間違いは遠回しに注意する
間違いを指摘するときは、相手に改善を促すためのレビューをするつもりで伝えましょう。正面から間違いを指摘する代わりに、まず相手に同調し、その後で問題への解決策を提案します。場合によっては他のチームメンバーをわざわざ巻き込む必要はないかもしれません。個人宛のメッセージで問題に触れても良いでしょう。 - 相手を批判する前に自分の間違いを語る
このヒントを取り入れることで、予想される緊張感を前もって解きほぐせます。自分自身の欠点について自覚と謙虚な姿勢を示し「誰でも間違うものだ」という感覚をチームメンバーと共有します。こうして周囲の同調が得られれば、誰でも自分の行動に責任をとりやすくなります。
緊張状態を解決できたら、最大限に前向きな気持ちで先へ進めるよう、相手や自分の気分を盛り上げましょう。失敗から立ち直って次に進むこと、これも働くことの一部であるとチームで再確認しても良いでしょう。
関連記事:あなたのチームは大丈夫?批判と上手に付き合うための5つのテクニック
■ 相手を考慮する
言葉づかいを効果的に選ぶ方法として、ワシントン大学の「言葉の効果的な使い方」でも説明されている、以下の3点を意識すると良いでしょう。
- 1つめ:文章の目的
- 2つめ:文章の背景
- 3つめ:文章を読むであろう読者
これら3つの要素がメッセージを受け取る側に与える影響を考慮すると、チーム内でのやりとりにも役立ちます。
ビジネスチャットで場違いな発言を避けるために、次のように自問自答しましょう。
- メッセージのゴールは何か
- メッセージの背景にある状況を考慮しているか
- プライベートチャットか公開チャットか
- 公開チャットの場合、受信者は他の人がこのメッセージを見ることをどう感じるか
- 何かを想定して書いているか、その想定に根拠はあるか
メッセージを受けとる側の視点を理解できれば、思いがけず否定的な反応を受け取ってしまうことはなくなります。メッセージを伝える場やタイミング、伝え方によっても相手の反応に大きな差が出ることを念頭に置いておきましょう。
■ 間違いは潔く認める
仕事において自分の発言に責任をもつことはとても大切です。チームメンバーに対し間違いを認めることは、自分の言動への責任を果たし、謙虚な姿勢を示します。
仕事の結果の良しあしにかかわらず、自分の仕事に対して責任感をもつことはチームにとってプラスになります。
間違いを認めることは楽しくも簡単でもありませんが、あいまいな言葉を避け、間違えたことはきちんと認めましょう。その上で修正できることは修正し、次に進みます。問題が深刻であったり同じ問題を何度も繰り返したりしているのでない限り、すぐに忘れられてしまうでしょう。
チームに対して誠実な態度をとり、間違えたことは率直に詫びること、実はそれ自体がチームワークにとって価値のある行為です。
まとめ
カーネギーが初めて著書を出版して以来、コミュニケーションの手段は大きく変化しました。
それにもかかわらず、カーネギーが提唱した人とのかかわり方の多くが、今日のコミュニケーションに適用できることは驚きです。本記事でご紹介したストラテジーを実践して、あなたのチームのコミュニケーションにもぜひ活かしてください。